親が認知症になったらどうしたらいいのか不安になりますよね。
ましてや、親がひとり暮らしだったら…。
子どもとして何をするべき?何ができる?
病院へは連れていくべき?どのタイミングで?
不安は尽きません。
私の父は離れた実家でひとり暮らし。
母が亡くなってから「ひとり暮らしは気が楽だ」と、それなりに生活を楽しんでいたようなのですが、半年以上前から、あれ?ちょっとおかしい?と思うことが増えてきました。
父を実家近くの認知症外来がある病院で診てもらったところ、やはりアルツハイマー型認知症と診断されました。
その時に先生に勧められた本が長谷川嘉哉著【ボケ日和】です。
この記事では実際に親の認知症に不安を感じている私が「読んで良かったな」と思った本、長谷川嘉哉著【ボケ日和】を紹介します。
同じように親や家族の、またご自身の認知症に不安を感じている方にも、ぜひ読んで欲しいと思います。
【ボケ日和】長谷川嘉哉著
私の父は現在87歳、実家でひとり暮らしです。
普通に高齢のひとり暮らしが心配で、月に1〜2回ほど車で1時間かけて実家へ様子を見に行っていました。
半年以上前から「父の記憶力が怪しくなっている?」と感じることが増えてきました。
それ以前から同じ話を何度もすることはあったのですが、それは高齢者特有のものだろうと、毎回初めて聞くふりをして同じ話を聞いていました。
ですが、同じ話をするサイクルが短くなっている。
1〜2週間前のことを全く覚えていないなど「あれ?おかしい?」と感じることが増えてきたのです。
実家へ行く頻度を週1に増やし、実家を掃除していると、怪しい健康食品の請求書や、期限の切れてしまった払込用紙が出てきます。
本人に確認しても「分らない。」という返事。
これが、認知症の初期症状だったんだと分かったのは、今回紹介する【ボケ日和】を読んでからでした。
著者紹介*長谷川嘉哉
1966年名古屋市生まれ。
祖父が認知症になった経験から医師を目指し、実際に認知症専門医になった長谷川嘉哉氏。
医療法人ブレイングループ理事長でもあり、医療・介護・福祉のあらゆる分野で在宅生活を支えるサービスを展開。
病気だけでなく生活、家族も診るライフドクターとして活動していらっしゃいます。
ベストセラーになった「親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす!」「認知症専門医が教える!脳の老化を止めたければ歯を守りなさい!」などの著書があります。
ボケ日和*本の紹介
【ボケ日和】の中では、認知症の症状の進行を四季(春・夏・秋・冬)に例えて、どんな事が起こるのかを分かりやすく紹介しています。
著者の長谷川先生が、祖父の介護をする母親を見てきた経験から、介護をする側の立場をとても尊重して下さっていることが伝わってきます。
多くの患者さんのエピソードが描かれ、こんな症状に対してはどういう対応をするべきかなど具体的に書かれていて、「事前に分かっていれば何とかなるものだな」と納得させられます。
今認知症の家族の介護で悩んでいる人、これから介護に関わる人、自身についても不安な人にも読んでもらいたい1冊です。
私はこの本を読んで本当に気が楽になったよ。
認知症の患者さん自身も不安になっていることを知ったから、父にイライラすることも減ったよ。
「ボケ日和」を読んで
父の認知症を認めたくなかった自分に気付いた。
父の様子がおかしい?と何となく感じだした頃、「まぁ、高齢だし、普通に物忘れぐらいするでしょ。」と無意識のうちに気がつかないようにしていた自分がいたようです。
今振り返ってみると、一緒に父に会いに行った私の夫はその頃から「お父さんヤバいんじゃない?」と言っていました。
その言葉に正直「カチン」ときていて、何となく、夫と父を合わせないようになりました。
「ボケ日和」内でも、「実の子は目が曇りがち」と書かれています。
実際、遠方に住む兄が久しぶりに父に会って「明らかにおかしい」と連絡をくれるまで、私は何の対処もしなかったので、相当目が曇っていたのだと思います。
ロンググッドバイ(長いさよなら)~覚悟ができました。
アルツハイマー型認知症のことを英語でLong goodbyeと言うそうです。
父との実際のお別れの日はまだ先になりそうですが、先に父の記憶から実子である自分がいなくなる日が来るんだ、という覚悟ができました。
最近のことですが、目の前にいる父が私のことを父の妹と勘違いしていることが分かって、その日はショックで帰りの車の中で涙があふれてきました。
次に会った時には普通に私のことも分かっていたのですが、きっとこの先、少しずつ分からなくなっていくんだろうなと思います。
目の前にいる父が「以前の父とは違う」ことを受け入れるのに、私の方も長い時間をもらったんだと思うことにします。
「ボケ日和」の中では、症状の進行を「ちょっと変な春」「かなり不安な夏」「困惑の秋」「決断の冬」と、4段階を四季に例えて分けています。
春夏秋冬と4段階に症状が進行していって、もう春が巡ってこないのだと思うと悲しい気持ちになりますが、いつか来る父の人生の終わりを受け止める覚悟をしなきゃな、と感じています。
介護はひとりで頑張らなくてもよい。
著者の長谷川先生は「介護をする家族の気持ちに寄り添ってくれているなぁ。」と「ボケ日和」全編を通じて伝わってきます。
かつて私の母が、ほとんど一人きりで義父(私の祖父)を看ていたように、主介護者が犠牲となってつらすぎる思いをしていたわけです。
そんなことがないように、平成12年に国がスタートさせたのが「介護保険制度」です。
この制度では、「要介護認定」を受けた被保険者の誰もが、段階に応じた介護支援サービスを受けられます。少子化がますます進むこの国にとって、なくてはならない、すばらしい制度だと思います。
だから介護者はこれを、積極的に利用すべきなのです。
ボケ日和 長谷川嘉哉 著
昭和生まれの私達世代は、「家族の面倒は家族でみるもの」「施設に入れるのは親を見捨てるようなもの」などと謎の先入観があって、他人の手を借りることに抵抗感がある人も多いのではないでしょうか。
田舎へ行けば行くほどその傾向が強いのでは?と感じます。
「ボケ日和」では、介護支援サービスを受けること、施設へ入所することのメリットも書かれています。
介護支援サービスは積極的に受けるべき。
介護する側の手抜きではなく、介護される人のためでもあります。
実際、私の父もディサービスに行った日は、電話の向こうの声にハリがあります。
他のことはすぐに忘れてしまうのに、ディサービスへ行って楽しかったことは記憶に残るみたい。
はじめは抵抗感があったけど、ディサービスへ行くと同年代の人と話ができるから、楽しいわ。
私の父の場合、ひとり暮らしがいつまで続けられるかは時間の問題なので、次の段階への準備も必要になってきます。
認知症がどのように進行していくかが分かると、この先どのように対処していくべきか、道筋が見えてくるので、心構えも変わってきます。
最後の時を迎える日までゆったりした気持ちで接していけたら、と思うし、この先何度もこの【ボケ日和】を読み返すんだろうな、と思います。
とても優しい言葉で書かれていて、読みやすい本でしたが、どうしても文字を読むのがつらい、という人にはマンガ版「ぼけ日和」もあります。
こちらは矢部太郎氏のほのぼのしたイラストで、認知症のことを描いているのに思わずほっこりしちゃいます。